衛星軌道¶
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衛星軌道の情報¶
TLE形式(Two Line Element)¶
軌道要素(orbital elements)を2行のテキスト形式で表現したもの。フォーマットはWikipedia(日)が詳しいです。
2行軌道要素形式 -Wikipedia
公開されている衛星軌道情報¶
いろいろな組織・個人が衛星の位置を測定して、また公開しています。
測定方法には、目視(光学)による観測、電波放射による観測、レーダー観測などがあります。
https://www.space-track.org
アメリカ戦略軍 統合宇宙センターが提供するデータを公開。要登録。このサイトのミラーサイトが幾つか存在し、ミラーサイト経由では登録なくてもTLE情報を入手可能。
ミラーサイト http://celestrak.com/ http://www.heavens-above.com/ http://www.lizard-tail.com/isana/tle/
https://www.prismnet.com/~mmccants/
天体観測として衛星を観測しTLEとして公開している模様(個人?)。
調査メモ¶
- きどうようそのひみつ
TLE形式の説明、軌道要素のカタログ管理元のアメリカ戦略軍 統合宇宙センターの説明など。
軌道6要素¶
衛星の軌道は楕円軌道をとり、楕円にある2つの焦点の1つが地球となります。軌道が真円に限り中心が地球となります。
ケプラーの法則に基づく軌道を表現する際にパラメーターとなる6要素です。ある時間(元期:Epoch)における6要素が分かれば衛星の軌道と位置が分かります。
実際には、ケプラーの軌道要素以外に摂動(太陽や月の引力、太陽光圧力、地球重力分布など)による影響を補正して衛星の軌道や位置を計算しています。
記号 | 要素名(和) | 要素名(英) | 備考 |
---|---|---|---|
a | 軌道長半径 | semi-major axis | |
e | 離心率 | eccentricity | |
i | 軌道傾斜角 | inclination | |
Ω | 昇交点赤経 | right ascension of the ascending node | |
ω | 近地点引数 | argument of perigee | |
M | 平均近点離角 | mean anomaly |
離心率¶
楕円の扁平率を表し、0<=e<1
の範囲をとり、0は真円となります。eが1以上になると楕円ではなくなります。
軌道傾斜角¶
軌道(楕円)は軌道面と呼ぶ平面上に乗っています。この軌道面と赤道面とのなす角が軌道傾斜角です。
昇交点赤経¶
軌道と赤道面との交点2つのうち、南から北に向かう軌道の交点を昇交点とし、赤道面上の2つの線、春分点方向のx軸と地球から昇交点を結ぶ線のなす角度が昇交点赤経です。
近地点引数¶
軌道の楕円上で最も地球に近い点を近地点とし、軌道面上の2つの線、地球と昇交点を結ぶ線と地球と近地点と結ぶ線のなす角が近地点引数です。
平均近点離角¶
地球から見て、近地点を0度、遠地点を180度とした360度表現において、衛星が近地点を通過して周回する経過時間を角度で表したものです。1周回の時間を例えば90分とすると、近地点を通過してから30分経過した時の平均近点離角は、
$ M = 360 \times \frac{ 30 }{ 90 } = 120 $
となります。
ケプラーの法則から、楕円上の衛星はその位置により速度が変化します。この角度は、あくまで近地点を通過してからの経過時間を1周回の時間に対する割合を360分率で表現したものです。軌道が真円でない場合は、実際に地球から見たその時間の衛星の位置とは異なります(近地点0度と遠地点180度の時のみ位置と合う)。
軌道6要素とTLEとの変換¶
軌道6要素のうち、軌道長半径以外の5つの要素はTLEの2行目に同じ項目があるのでそのまま値を使用することができます(桁数表現はTLEに合わせる必要がありますが)。
軌道長半径は、TLEの平均運動(mean motion)に変換する必要があります。ケプラーの第3法則から、地球と衛星の距離と、衛星の速度の正確な関係が分かるので、変換可能です。
平均運動[rad/s] $ n = \sqrt{ \frac{ \mu }{ a^3} } $
但し、a: 軌道長半径[m]、 $ \mu $: 地球の重力定数(GM) $ 3.98600441 \times 10^{14} $ $ [m^3/s^2] $
TLEの平均運動の単位は、[回/日]なので、上記の式から単位に合わせて変換が必要となります。
平均運動[回/日] $ n' = \sqrt{ \frac{ \mu }{ a^3} } \times \frac{ 86400 }{ 2 \times \pi } $
軌道6要素からTLEへの変換ツール¶
- Excel 2010 のVBAで作成した軌道6要素からTLE変換ツール
Kepler6ElementsToTLE-0.0.1.xlsm
衛星軌道の計算¶
ライブラリ¶
Python¶
- Pykep
ESA(欧州宇宙機関)の advanced Concepts Team で使用している天体力学ツール。C++ライブラリのPythonラッパー。 - PyEphem
太陽系の天体(惑星、彗星、小惑星、人工衛星など)の位置を計算するライブラリ。CのPythonラッパー。
用語¶
英語¶
Trajectory と Orbit¶
衛星のミッションを果たす軌道(目的地となる軌道)は Orbit、目的の軌道へ移動する軌道は Trajectory と英語では使い分けがあります。
一方、日本語ではどちらも軌道と表現されます。
参考資料¶
- [1]軌道要素の解説(軌道計算プログラム InstantTrack の作者フランクリン アントニオ氏の記事の翻訳)
- [2]基礎知識 軌道要素(軌道計算ソフトウェア STK の日本代理店 LSAS Tec社のWebサイト
- [3]ケプラー軌道方程式のまとめ(東工大 松永教授)
- [4]軌道6要素(東京大学教養学部 2010年度冬学期 宇宙科学II (海老沢) 講義ノートより)
- [5]静止軌道の摂動の簡易理論(日本航空宇宙学会論文集 Vol.55 No.644 2007 川瀬成一郎著)
- [6]How to get semi-major axis from TLE?(stackexchange)
- [7]人工衛星の軌道要素(高知工科大学 国土情報処理工学研究室)
- [8]Solar System Dynamics輪読 2体問題(北海道大学 惑星宇宙グループ SSDゼミ)
- [9]人工衛星の軌道の種類~目的地としての軌道と移動ルートとしての軌道~(宙畑)
- [10]人工衛星の軌道を徹底解説! 軌道の種類と用途別軌道選定のポイント(宙畑)
- [11]Pythonを使って人工衛星の軌道を表現する~軌道6要素、TLE~(宙畑)
- [12]軌道要素の解説(AMSAT)
ブログ等¶